
ラベンダーと聞くと北海道富良野市のラベンダー畑、紫色一面の鮮やかな風景を思い浮かべる方も多いはずです。
しかし、そのラベンダーには多くの種類・品種があることを知っている人は意外と少ないようです。
ラベンダーは品種によって耐暑性や耐寒性、病気に強い種類もあり、高温多湿な日本の気候にマッチしたものもあるのです。
そんなラベンダーのあまり知られていない品種についてご紹介いたします。
ラベンダーはシソ科ラバンデュラ属の常緑性低木で、原産地は地中海沿岸地方からアフリカ北部、インド、西アジアなどで、約30種類のラベンダーが知られています。
この30種はあくまでも自然界に自生する品種であり、これに変種や栽培品種を加えるとさらに多数の種類のラベンダーがあることがわかっていただけると思います。
もともとは薬用植物として処方されていましたが、素晴らしい香りが人気を集め、園芸でも盛んに育てられるようになってきました。
ラベンダーの品種は大きく分けてアングスティフォリア系、ラバンディン系、ストエカス系、デンタータ系、プテロストエカス系などが知られています。
アングスティフォリア系の品種
アングスティフォリア系のラベンダーはラベンダーの代表とも言える種類で、アングスティフォリアとはラテン語で細い葉を意味するように細い葉と香りのよい花に特徴があります。
アングスティフォリア系のラベンダーは耐寒性には優れていますが、高温多湿な日本の夏に弱く、暖かい(暑くなる)地域では丈夫な株を維持するのはかなり難しくなります。
ヒッドコート

アングスティフォリア系の代表的な品種で濃紫色のビロードで作られたようながくが特に美しいラベンダーです。
ヒッドコートは上手に育てると高さ40〜50cmくらいまで育ちます。
乾燥後も色や芳香が残りますのでポプリやリース、押し花などに適したラベンダーとなっています。
マンステッド

マンステッドはイギリスの著名な園芸家でもあるガートルード・ジェイクルが作出し、1916年に発表された早咲きのラベンダーです。株の高さは30〜40cmと低めな品種で葉はやや小さめ、花やがくは少々赤みを帯びたすみれ色をしています。
ロゼア

ロゼアはラテン語でピンクの意味を持つ名前からもわかるようにやさしいピンク色の花を咲かせるラベンダーです。
がくも淡いピンク色で蕾の状態も非常に美しく、開花するとさわやかな甘い香りが魅力的です。
しかし、開花後雨に当たったり、花が終わると花弁は茶色に変色してしまいますので乾燥保存したいときには開花直前に収穫すると良いでしょう。
ロゼアはラベンダーのなかでも早咲きの傾向があるため、初夏の花壇のちょっとしたアクセントに向いている花と言えます。
ラバンディン系の品種
ラバンディン系のラベンダーは自然交雑、もしくは人為的に交配された系統でアングスティフォリア系とスパイクラベンダーの交雑、交配品種です。
香りが強く花も美しいアングスティフォリア系と野性味のある香りに加えて丈夫な性質を持つスパイクラベンダーの長所をいいとこ取りした園芸栽培向きのラベンダーです。
ラバンディン系のラベンダーは成長が早く丈夫で大株に育ち見栄えがするうえに、花穂が大きく、花の色も美しいので各地の公園や観光地などで栽培されているのをよく見かけます。
ラバンディン系のラベンダーはいずれの品種も花穂と花茎が長く、大株に育ちます。
丈夫で高温多湿や病気にも強いので日本の気候にもマッチして育てやすいラベンダーとされています。
なお、このラバンディン系のラベンダーは種では増えないので挿し木をして増やします。
グロッソ

南フランスのグロッソ氏によって1972年に作出された交配種で花色は青紫色、花茎が長く、がくとがくの付け根にある包葉も紫色で美しいラベンダーです。
非常に丈夫な品種で高温多湿や病気にも強いので初心者の方にも育てやすい品種です。
成長は早く、3年ほどで直径60〜80cm程度の横広がりの大株に育ちますので植え付けの際には株間を1mくらい開けて植え付けましょう。
ラベンダーが大きく成長するまで少々寂しいようでしたら1年草などを植えて楽しむといいかもしれません。
スーパーセビリアンブルー

地中海地方に自生していた品種を日本の気候に合うように改良した品種のラベンダーで耐暑性、耐寒性、耐病性に優れています。
涼しげな青紫色の花を咲かせる丈夫な大型種ですので鉢栽培なら10号以上、花壇などに植えるのでしたら80cmくらいの株間は欲しいところです。
アルバ

アルバとはラテン語で白を意味し、名前の通り白い花を咲かせるラベンダーです。
やや幅が広い銀緑色の葉は密に茂り、丈は70cm〜80cmの大株に育ちます。濃い紫色の花色をもつ、同じラバンディン系の種類と一緒に花壇などに植えると白い花がアクセントになります。
ストエカス系の品種
ストエカス系ラベンダーは丸みを帯びた花穂の先端にあるウサギの耳のような形の苞葉が特徴的なラベンダーです。
原産地はカナリア諸島、スペイン、アフリカ北部などでフレンチラベンダーやスパニッシュラベンダーなどと呼ばれることもあります。
頭にリボンを付けたような独特な花の形状と甘い香りが人気のラベンダーで、さらに開花時期が長く、次々と花を咲かせるところも魅力の一つとなっています。
キューレッド

イギリスの植物園の名を持つこのラベンダーは長期間に渡って愛らしい花を次々と咲かせます。
花穂のサイズは2cmほとでバラ色の花と花穂の先端につけた淡いピンクの苞葉とのコントラストが特徴的なラベンダーです。
大きくなると株の高さは60cm程度、株張りは50cmほどになりますので植え付けの際には余裕を持って株間をとりましょう。
マーシュウッド

ニュージーランドの南島にあるマーシュウッドガーデンで作出された大型種のラベンダーで丈が1mを越すものもあると言われています。
ストエカス系ラベンダーとビリディスラベンダーの交配種で、花穂の先端につけた華やかなワインレッドの苞葉と長い花茎が特徴です。
香りが良く、花の数も多く見栄えがするので公園や観光地などで栽培されているのをよく見かけます。
レウカンサラベンダー
ストエカスラベンダーの白花種で、別名ではホワイトフレンチラベンダーやホワイトスパニッシュラベンダーなどと呼ばれています。
細い葉が密に生えた小枝の先端に美しい花穂を次々とつけます。
花壇などに植えると丈は50cmくらいまで育ちますが、雨に濡れると花が茶色くなってしまったり、泥の跳ね上がりなどでも汚く見えてしまうことがありますので鉢植えにして雨の日は移動できるようにしたほうがいいでしょう。
デンタータ系の品種
デンタータとはラテン語で歯のようなという意味で、この種のラベンダーは歯のようにギザギザの切れ込みが入った葉を持っているのが特徴です。
原産地はカナリア諸島やスペイン東部などで別名をフリンジドラベンダー、キレハラベンダー、フレンチラベンダーなどともいいます。
葉が銀緑色のように見えるのは細かい産毛が生えているためで、葉の色が緑色系のものと灰色系のものがあります。
四季咲き性があり、4月頃から6月頃と11月頃から12月頃の年2回開花します。
デンタータラベンダー

デンタータ系の特徴が色濃く出た品種で、細長い葉の縁に入った歯のような切れ込みが特徴的なラベンダーです。
薄いすみれ色の花はあまり目立ちませんが花穂の上部につく薄紫色の苞葉が花の存在をアピールしています。
四季咲き性があり、冬でも花が咲きやすいのもこの種の魅力と言えます。
このようにラベンダーにも様々な品種があり、どのラベンダーを選ぶかの楽しみもあります。
ただ各品種の特徴をしっかりと把握し、育てる環境にもマッチした品種を選ぶことがラベンダーを上手く育てるコツとも言えるでしょう。