
四季咲き性のバラは春夏秋と咲き続けますが、春の一番花の次に美しいのは秋バラです。
秋は春より気温が下がるため、花色が鮮明で美しくなります。
秋バラをさらに美しく咲かせるには、「夏剪定」という作業が有効です。
バラの夏剪定とは何か

夏剪定とは、文字通り晩夏に行う剪定のことです。
四季咲き性のバラは秋にも開花しますが、順調に生育した株は品種によっては夏の終わりには樹高が高くなりすぎたり、株姿が乱れたりしている場合があります。
この作業は日本だけで行われているもので、バラの生育期間が短い欧米では株がそれほど大きくなりすぎることもないため、同様の作業をする習慣はありません。
夏剪定は、「ミスターローズ」と呼ばれた故・鈴木省三氏が日本の気候を考慮して考案した日本独自の手入れ方法です。
夏剪定をすることで、秋バラが咲くのにちょうどよい時期に花を揃えて咲かせることができます。
夏剪定を行う目的は大きく分けて三つあります。
樹形を整えること、開花時期を合わせること、そして株の状態を確認することです。
ただし、四季咲きや返り咲きのバラは何もしなくても自然に花が咲くため、夏剪定は必ずしなければならない作業というわけではありません。
剪定の適切な時期と温暖化の影響

バラの夏剪定の適期は8月末から9月上旬とされています。
以前は8月下旬に行うのが基本とされていましたが、温暖化によって暑さが長く続くようになったため、9月上旬に行うケースも少なくありません。
タイミングの判断には、開花までの日数を逆算する考え方が役立ちます。
秋バラの開花は10月中旬から始まりますので、逆算して開花の50日ほど前に剪定しておくとよいでしょう。
夏剪定が遅くなるとそれだけ開花する時期も遅くなります。
開花のタイミングで気温が下がりすぎると咲かなくなってしまう可能性もあります。
反対に夏剪定が早すぎるとまだ暑さが残っている時期に開花してしまい、気温が高いと花もすぐに終わってしまうため注意が必要です。
秋の花にとって剪定の遅れは致命的で、一日の剪定の遅れが開花を3〜5日遅らせると言われています。
できれば9月上旬までに剪定を終えておきたいものです。
また、低温によるブラインド(花芽が付かなくなる現象)を回避するためにも9月10日ごろまでに剪定を行うことが望ましいとされています。
剪定の基本的な切り方と切る位置

実際に鋏を入れるとき、夏剪定ではすべての枝をカットすることが基本です。
外芽(外側を向いてついている芽)の上の位置にハサミを入れましょう。
葉がたくさん残っているバラの場合は、樹形を扇形に整えることを意識して剪定していきます。
枯れ枝や混雑している部分の枝、細かい枝などは切り落としましょう。
ひとつの枝につき、葉が3枚〜4枚は残るように調整しながらカットします。
切る高さの目安は品種の大きさによって異なります。
小輪や中輪の品種の場合は株の高さが3分の2程度になるくらいが目安です。
大輪の品種であれば2分の1から3分の2程度が目安となります。
切る位置は五枚葉の付け根の目に沿って斜めに1mm程上をカットします。
斜めに切ることで残す部分を少なくすることが大切です。
また、枝が途中から分かれている場合、枝分かれのすぐ上で細い枝を切り落とします。
細い枝を残しても良い花は咲きません。
バラは太い枝を残すことで、秋の花を美しく咲かせることができます。
さらに、まだ花や蕾がついていても迷わず切ることが大切です。
花が咲いている枝もつぼみがついている枝も含め、一斉に剪定することによって、10月下旬ごろに多くの花を楽しめます。
切った花は花瓶に生けて室内で楽しむとよいでしょう。
品種ごとの剪定の違い
バラの系統によって、夏剪定の方法には差があります。
ハイブリッドティーローズ(四季咲き大輪系)は、二番花の咲いた枝を長さ1/2〜1/3で切ります。
さらに病害虫の被害にあっている葉はすべて取り除きます。
一般にハイブリッドティーは樹高の2/3程度を残し、外向きの良い芽の上で切ります。
フロリバンダローズ(四季咲き中輪系)は、全体が半分〜1/3くらいの高さになるように切りますが、花をたくさん咲かせるために枝を多く残してください。
外芽、内芽がバランスよく配置するように切ってください。
フロリバンダは花がら摘み程度にとどめて剪定しないでもよく、ただし鉢植えは樹高を下げる意味で剪定します。
シュラブローズについては特に注意が必要です。
シュラブ系統のバラは四季咲き性質の強いものと弱いものがあり、ほぼ一季咲きのシュラブ系統に夏剪定を行っても秋に咲くことはありません。
また、今世紀に入ってから育種されている品種のほとんどがシュラブ系統のバラなので、そのバラが夏剪定向きかどうかは品種ごとに判断する必要があります。
四季咲き性のシュラブローズの夏剪定は、他の系統より早めの9月初頭に行います。
ミニチュアローズは全体が半分〜1/3くらいの高さになるように芽を気にせずに刈り込む感じで切ります。
中心が高くなるように剪定すると見た目がよくなります。
また、アルバやケンティフォーリア、ダマスクなどのオールドローズは、風通しを良くする程度の剪定で構いません。
なお、つるバラだけは夏剪定不要です。
弱った株への対応
株が弱っている場合は無理に剪定しないことが原則です。
病気や害虫などで弱った株は枝を切らず、花がらを切る程度にします。
株全体に葉が3分の1ほどしか残っていない場合も夏剪定を行って問題ありませんが、その場合は剪定の際に大胆に切るのは避け、先端を軽くカットする程度にとどめます。
古い枝や枯れた枝などは切り落としますが、元気な枝葉はなるべく落とさないようにしましょう。
剪定の1週間ほど前に速効性の液体肥料を与えておくと株が回復しやすくなります。
基本的には夏剪定も冬剪定も元気な株にのみ行います。
弱った株や小さな株、また新しい株に強い剪定をすることにより、いじけてしまうこともありますので、元気な株のみ行うように心がけてください。
剪定後の管理
剪定したあとのケアも秋バラの出来を左右します。
9月になって涼しくなると新芽が伸びてくるため、生育を助けるために追肥を再開します。
夏剪定が終了した後、地植えの場合はバラ専用の緩効性肥料を施しましょう。
夏剪定をしたら、約50日バラは咲きません。
そのため、時期を逆算して夏剪定をすることが大切です。
9月以降は徐々に気温が下がってバラの生育がゆるやかになるため、「夏(秋)の剪定が1日遅れると、開花は2日遅れる」点も考慮してください。
バラはバッサリと枝を切っても平気で、むしろ大胆に切ることで花付きがよくなり樹形も整います。
剪定後は葉がなく枝も短く残念な姿となりますが、すぐに成長しますので心配ありません。
剪定という作業に対して必要以上に慎重になるより、適切な時期に思い切って行うことが、美しい秋バラへの近道といえます。