
日本の猛暑がバラ栽培に突きつける現実について、まずは正直に言ってしまうと相当に難しい問題です。
バラはもともと冷涼な気候のヨーロッパの原種をもとに改良されてきた植物で、ほとんどの品種は暑さに弱い性質を持っています。
それにもかかわらず、日本でバラを育てようとすると梅雨が明けた途端に気温が急上昇し、連日35度を超えるような夏がやってきます。
ヨーロッパの著名なバラ園と日本のベランダや庭では、環境がまるで違うのです。
今、多くの方が育てているのは園芸品種のバラです。
野生種のバラ属はアジアやヨーロッパ、北アメリカなど広い範囲に分布し、さまざまな気候環境に適応して育ってきましたが、育種技術によって作られた園芸品種は、野生種に比べて強健性や耐病性においても遺伝的に問題を抱えていることがあります。
連日30度を超えるような高温多湿の環境は、こうした園芸品種のバラにとって特に厳しい時期となり、とりわけ炎天下での鉢栽培は相当な注意が必要です。
高温障害とはどういう状態か
真夏の暑さが続くとバラに「高温障害」が起きます。葉が黄色く変色したり、波打ったり垂れ下がったりするのはその典型的なサインです。
こうした症状を見て「水が足りないのだろうか」「病気だろうか」と悩む方は多いのですが、多くの場合はそれ以前に環境そのものが問題になっています。
バラは気温が30度を超えると根に異常をきたす可能性があります。
暑い時期に鉢植えのバラが弱る原因のひとつとして、鉢の中が高温になることで根が傷み、株全体が弱ることがあげられます。
いかに根を守るかが、夏を乗り切る大事なポイントです。
さらに高い気温、35度以上が連日続くとバラは暑さに耐えられなくなります。
限度を超えた暑さが続くと耐えきれず枯れてしまうこともあります。
これは水やりや肥料といった問題ではなく、環境そのものの問題です。
遮光ネットの選び方と使い方
株全体に強い直射日光が当たる場合、葉焼け対策を兼ねて遮光することがひとつの有効な方法です。
葉焼けした部分は変色し、枯れる原因にもなってしまうため、遮光ネットや不織布などを使って日よけをつくることが勧められています。
場所を移動できないなら遮光ネットを利用しましょう。
以前は見栄えのよくないものが多かったのですが、近年は見た目も涼し気なタイプが登場しています。
遮光ネットの遮光率については、バラの場合は30〜45%程度のものが一般的に使いやすく、光を完全に遮ってしまうと今度は光合成が不十分になるため、あくまでも「和らげる」程度の設置が理想です。
また、遮光ネットを設置する際に見落としがちなのが風通しの問題です。
日よけのための寒冷紗を設置したら、風の通りが悪くなっていないかをチェックすることが大切です。
密閉した状態になってしまうとかえって蒸れを招き、病気の原因になりかねません。
ネットの設置角度や位置を工夫して、空気の流れを確保しながら光を遮ることが求められます。
鉢植えの場合の具体的な遮光方法
鉢を移動できる場合、もっとも手軽な対処は置き場所を変えることです。
特に西日が良くないので、可能なら夏の間だけ西日の当たらない半日陰で管理するのが手っ取り早い解決策です。
鉢そのものへの熱対策としては、ひとまわり大きな鉢にすっぽり入れる「二重鉢」がおすすめです。
大きな鉢に入れることで、バラの鉢に直射日光が当たらなくなり、鉢の中の温度上昇を防ぎます。
もし大きな鉢で動かすのが大変な場合は、鉢にアルミホイルや梱包用の気泡緩衝材などを巻き付ける方法でも断熱効果が期待できます。
また、ベランダやコンクリートの上に直接鉢を置かないようにし、レンガやブロックで鉢を底上げして床面にたまった熱気が鉢を温めないようにすることも有効です。
二重鉢の外側の鉢は白やベージュなど薄い色の方が熱を反射してくれます。
細かいことのようですが、鉢の色だけでも内部の温度はかなり変わります。
黒い鉢はとくに熱を吸収しやすいため、夏場はとくに注意が必要です。
地植えの場合の遮光と地温対策
地植えのバラは鉢を移動することができないため、別の工夫が必要になります。
庭植えで移動させられない場合は、バラの周りに他の草花やハーブなどの鉢を置いて遮光するのも効果的です。
背の高い草花を周囲に配置することで、午後の強い日差しを自然な形で遮ることができます。
地温を下げるためのマルチングも重要な手段です。
梅雨明け後に急に高温になるとバラの内部の養分が暑さのために消耗してしまいます。
わらなどでマルチングして地温を下げてバラを守りましょう。
わらが手に入りにくい場合は腐葉土で代用することもできます。
バークチップも見た目が美しく、実用的なマルチング材としてよく使われます。
遮光はあくまでも「補助」のひとつ
最後に大切なのは、遮光だけですべてが解決するわけではないという点です。
一つの方法だけでこの猛暑に完全に対処することはできず、いくつかの対策を組み合わせることが必要です。
根を守り、適切に水を与え、風を通し、そして日差しを和らげる。
そのひとつひとつが積み重なって、バラはようやく日本の夏を乗り越えられます。
猛暑が年々厳しくなる中で、バラを育てるということは、それだけ手間と知識を要する営みになってきているといえるでしょう。