
あじさいの花色を左右するのは、実は「土」の性質にあります。
単に専用の土を使えばよいという単純な話ではなく、土壌の化学的な仕組みを理解することが、鮮やかな色を引き出す近道になります。
花色が変わる仕組み
あじさいの花色が変わる基本的なメカニズムは、土壌中のアルミニウムが水に溶けてアルミニウムイオンとなり、あじさいの根から吸収され、花に含まれるアントシアニン色素と結合することで花色が青くなるというものです。
つまりあじさいの花色は、もともとアントシアニン本来の色であるピンク・赤系が基本であり、そこにアルミニウムが加わることで初めて青色へと変化するわけです。
土壌が酸性(pH5.0~5.5)だと土壌に含まれるアルミニウムが溶けやすくなり、アントシアニンと結合して青色に変化します。
一方、土壌がアルカリ性(pH6.0~6.5)だとアルミニウムは溶けにくく、花色は赤系のまま変化しません。
紫色に見えるあじさいは、その中間の状態です。
日本の土壌のほとんどは酸性雨によって若干酸性に傾いています。
公園などのあじさいに青や紫が多いのはそのためで、ピンクや赤みの強いあじさいは土壌酸度を調整しないと発色しません。
ベランダや軒下で水道水だけで育てるとピンクに偏りやすいのも、雨水が当たらないために土壌の酸性化が進まないからです。
専用土は必要か
結論からいえば、専用土は「あると便利」なものであり、「なければ育てられない」わけではありません。
鉢植えでアジサイを育てるなら、庭木・ガーデニング用の培養土か、アジサイ専用の培養土が便利です。
ただし古い土や水はけの悪い土に植えてしまうと、病気にかかったり根腐れを起こしてしまうので注意が必要です。
自分で土を配合する場合、目指す花色によって組み合わせが変わってきます。
鉢植えで青色系のあじさいを育てるには、赤玉土と鹿沼土、ピートモスを同じ分量で混ぜたものがおすすめです。
赤色系には赤玉土と腐葉土を6:4で配合し、苦土石灰を加えます。
紫色を楽しみたい場合には中性の土が適しており、鉢植えなら市販の草花・野菜用培養土(pH6.0前後)を使うか、赤玉土小粒6・腐葉土3・バーミキュライト1に苦土石灰を土1kgにつき2g加え、緩効性肥料を混ぜたものが目安となります。
青・ピンク・紫、それぞれの土づくりのポイント
青色を鮮やかに咲かせたい場合
青い花にするには、肥料の窒素・リン酸・カリの比率のうちリン酸の少ない肥料を用い、水を切らさないように管理することが大切です。
なぜかというと、土の中にリン酸が多いとアルミニウムが吸収されにくくなるため、リン酸を多く含む肥料を使い続けると青い色は発色しにくくなってしまいます。
また土壌の水分量が少ないとアルミニウムの吸収が悪くなるため、水が足りないような土壌では、きれいな青いあじさいを咲かせることができません。
ピンク・赤色を育てたい場合
鉢植えなどの植え替えに使う用土は、中性から弱アルカリ性の土が適しています。
自分で配合する場合は、赤玉土小粒4・腐葉土4・バーミキュライト2の配合土が目安です。
地植えの場合は難易度が上がります。
日本の土壌はもともと酸性のため、庭植えの場合は苦土石灰や消石灰を土に混ぜ込んでアルカリ性にしても、雨などで流れて酸性に戻ってしまうこともあります。
そのため地植えより鉢植えのほうがコントロールしやすいといえます。
地植えで調整する場合の注意点
赤色系のあじさいを咲かせたい場合は、苦土石灰や消石灰などを土に加えて混ぜ、アルカリ性に傾けます。
酸度が調整されるまでには時間がかかるため、最低でも植えつけの2週間前までには作業を済ませ、しばらく土を寝かしておくことが必要です。
また、石灰を混ぜてから安定するには数か月かかりますので、事前準備が欠かせません。
土壌pHを急激に下げすぎたり上げすぎたりすると、植物が必要な栄養素を吸収できなくなる可能性があります。
pH が高くなりすぎた場合は、鹿沼土や無調整ピートモスをバランスよく加えて戻してください。
pH以外に色を左右する要素
土のpHだけを調整しても、思い通りの色が出ないことがあります。
品種特性、土壌のpH、土壌中のリン酸含量、水分量が複合的に影響し、また土壌のアルミニウム含量によっても状態が異なってきます。
さらに品種によっては、そもそも土壌pHで色が変化しないものもあります。
アナベルなどの白い紫陽花は花に色素がないため、土壌pHに関係なく白い花が咲きます。
また日当たりが悪いなどの理由でうまく発色せず、白っぽい色になることもあります。
花色をきれいに保つには、しっかりと太陽の光に当てることが大切で、とくに花芽がつくられる夏から秋にはたくさん光合成をさせて花芽を充実させましょう。
色の変化はいつ現れるか
あじさいはすぐに青くなったりピンク色になるわけではありません。
土壌pHやアルミニウム含有量を調整したことによる化学変化は、すでに咲いている花ではなく、成長中の蕾に影響を与えると言われています。
変化は時間をかけて徐々に起こるので、気長に待つようにしましょう。
土を変えたその年にすぐ理想の色が出なくても、焦らずに翌シーズンの開花を楽しみに管理を続けることが大切です。