
バラを育てていると春先にほっとひと息つく間もなく気になり始めるのがアブラムシの存在です。
柔らかく伸びてきた新芽の先をよく見ると小さな虫がびっしりとかたまっていて、触れるとベタベタしている。
そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
このベタつきの正体とアブラムシが引き起こす被害の全体像を知っておくことが、効率よく対処するうえでの第一歩になります。
ベタベタの正体は「甘露」
新芽がベタベタするのは、アブラムシが排泄する「甘露」と呼ばれる液体が原因です。
この甘露が植物に付着することで表面がべたつき、さらにそこにカビが繁殖するとすす病へと発展してしまいます。
すす病になると葉が黒く汚れ、光合成の妨げになるため、バラ全体の生育に影響が及びます。
また、アリはこの甘露を目当てに集まってきます。
そしてアリはアブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブの幼虫を遠ざける働きをするため、アブラムシとアリは共存関係を築いています。
バラの周りにアリが頻繁に集まっているときは、アブラムシの存在を疑ってみてください。
直接被害と間接被害を理解する
アブラムシはバラの新芽や茎、葉裏などの柔らかい部分に取りつき、口針を差し込んで汁液を吸います。
その結果、バラは栄養不足になり、芽や葉がしおれてしまう生育不良を起こします。
これがいわゆる「直接被害」にあたります。
さらに見逃せないのが間接被害です。
アブラムシが植物の汁を吸う際に一緒にウイルスを吸い込み、次の植物を吸汁することでウイルスを感染させます。
このウイルス病は感染すると全身に広がるため、一度かかると治療する方法がありません。
つまり、放置すると取り返しのつかない状態になる可能性もあるのです。
発生しやすい時期と環境
アブラムシは極端な寒さや暑さに弱いため、活発に活動する時期は3〜10月で、4〜6月と9〜10月の穏やかな気候の時期に特に繁殖します。
日本では約700種ものアブラムシが確認されており、黄緑色のものが多いですが、黒褐色のものなど様々な見た目のものがいます。
ほとんどの成虫は雌で、生まれたときから体内に子どもを宿した状態です。
一度で30匹の幼虫を1か月にわたって産むため、爆発的に数が増えるのが特徴です。
発生の一因となっているのが肥料の与えすぎです。
窒素分の多い肥料を与えすぎると葉で合成されるアミノ酸が多くなりすぎてしまい、そのアミノ酸を好むアブラムシが集まりやすくなります。
また風通しや日当たりが悪い環境も、アブラムシが増殖しやすい条件を生み出します。
少数発生時の対処法
発生初期であれば、薬剤を使わずに対処できる場面も多いです。
アブラムシは新しい梢の先端につきますので、早い段階であればセロテープで除去したり、手で摘まんで潰してしまうだけで十分対応できます。
粘着くんの噴霧でも駆除することができます。
数が少ないうちは水で洗い流す方法も有効です。
ハケやブラシでこすり落とす方法も効果的ですが、強い力を加えるとバラを傷める恐れがあるため、力加減には注意が必要です。
また水をかけすぎると多湿になり病原菌が繁殖することもあるため、やりすぎに気をつけましょう。
薬剤を使った駆除
数が増えてきた場合や広範囲に広がった場合は、薬剤の使用が現実的な選択肢になります。
土に混ぜるか株元にまく粒剤タイプは、根から成分が吸収されて植物全体に行き渡るため、散布の手間が少なく長期間の効果が期待できます。
クロチアニジンを含む「ベニカXガード粒剤」は、アブラムシを防ぐ効果が約1か月続き、コガネムシの幼虫やバラゾウムシ、病気の予防にも効果があります。
早めに撒いておくことが効果的です。
すでに発生してしまっている場合は速効性のあるスプレータイプが役立ちます。
「ベニカXネクストスプレー」は5種類の成分を配合したスプレー剤で、アブラムシやハダニのほかアザミウマ、チュウレンジハバチ、コガネムシ類成虫にも有効で、雨にも強く効果が長続きします。
同じ薬品を使い続けると耐性ができて効果が低下することがあるため、2〜3種類をローテーションで使うことが推奨されています。
農薬を使いたくない場合の選択肢
どうしても農薬を使いたくないという方には、いくつかの代替手段があります。
ニームオイルを希釈して散布する方法は、病害虫の発生前から定期的に使うことでアブラムシを忌避する効果があります。
植物への栄養補給にもなるとされており、バラ栽培で世界的によく使われています。
牛乳の原液をスプレーボトルに入れてアブラムシの発生箇所に散布すると乾いたときに固まって気門を塞ぎ、窒息させることができます。
ただし散布後は放置すると臭いや病気の原因になるため、乾燥したら水で洗い流すことが必要です。
木酢液も忌避効果があるとされており、米酢に唐辛子とニンニクを漬け込んだ液を300倍程に薄めて散布するとその香りでアブラムシを遠ざける効果が期待できます。
米酢はカビの繁殖を防ぐ効果もあるとされています。
予防のための環境づくり
アブラムシがつかないようにする完全な対策はないため、いかに被害を最小限に抑えるかを意識することが大切です。
強い香りを持つハーブ類、たとえばカモミールやマリーゴールド、ミントなどをバラの近くに植えるコンパニオンプランツもアブラムシの大量発生を抑える効果があるとされています。
また、アルミホイルなどを土の上に敷いて下から光を反射させるとアブラムシは方向感覚が分からなくなり近寄りにくくなります。
アブラムシには天敵が多く、ナナホシテントウなどのテントウムシ、クサカゲロウ、ヒラタアブの幼虫などがいます。
庭にこうした益虫が来やすい環境を保つことも、長い目で見た予防策になります。
3月初旬から月に1〜2回程度の殺虫剤の散布を予防として行うことで、シーズンを通じたアブラムシの被害を大幅に抑えることができます。
発見したら早めに動くこと、そして日頃からバラの状態を観察しておくことが、結果的にもっとも効率的な退治につながります。